ピアノ調律師の基礎知識

 平均律と各種音律 / ピアノ調律論

ピアノで使われる調律は通常平均律であるが、この平均律は「音律」のひとつであり、この音律が定着するまでには様々な音律が存在し、曲が作られてきました。ギリシャ時代から存在した純正律やピタゴラス音律からピアノの発達と共に古典調律を経て12平均率が生まれるまで主な音律を紹介します。

純正律

5度と3度が純正(ビートがゼロ)で、12平均率の長3度和音の感じとかなり違います。
きれいなハーモニーが奏でられる一方、転調が効かないのが最大の欠点で、一台のピアノで一つの調に定めだれます。純正調は転調が効かない理由として、全音幅と半音幅に独特の幅を持っていることがあげられます。全音は異なった2つの全音、「大全音」と「小全音」からなり、半音も全音の2分の1ではなく、半音を2個プラスしても、全音にならない幅です。つまり大全音は204セント、小全音は182セント、半音は112セントと、それぞれ異なった幅をもっています。この大全音と小全音の差をシントニックコンマと呼び、その差は22セントになります。
長音階のドレミファソラシド、1オクターブは「大全音」、「小全音」、「半音」、「大全音」、「小全音」、「大全音」、「半音」となります。

各音程による平均律と純正律のセント数の違い

音程 平均律 純正律 平均律は純正律に比べて
短3度 300 316 16セント狭い
長3度 400 386 14セント広い
完全4度 500 498 2セント広い
完全5度 700 702 2セント狭い
短6度 800 814 14セント狭い
長6度 900 884 16セント広い
1オクターブ 1200 1200 同じ

ピタゴラス音律

ピタゴラスが発案したことによりその名が付けられたこの音律は完全五度の3:2の周波数比を純正に積み重ねることに基づいたものです。
例えばD音(レの音)を起点とした場合、
E♭-B♭-F-C-G-D-A-E-B-F♯-C♯-G♯
となりこの得られたD音以外の11音をD音を起点に1オクターブの範囲内にまとめることができます。しかしながら完全五度を12音以上広げたときに問題が生じます。
例えば下方に
A♭-E♭-B♭-F-C-G-D-A-E-B-F♯-C♯-G♯
となり、A♭とG♯は同じ音であるが約23.46セント(半音の1/4)の差が生じ、この差をピタゴラスコンマと呼びます。

ミーントーン(中全音律)

純正調音階の大全音9/8と小全音10/9の差は81/80ですが、16世紀の初期において、この両比率を二つの中間比率にさせる調律法、ミーントーン(中全音律、中間加減律、中間音整律などの訳がある)が提案されました。これはピタゴラス音階の長3度81/64、408セントと純正調音階の長3度8/4、386セントの差22セントの不純を解消し、純正長3度を作るために純正5度を犠牲にしようとするものです。

不等分律

純正律、ピタゴラス音律、ミーントーンはそれぞれ異名異音になり、ピアノの鍵盤上においては調が変わると対応できないため、ミーントーンの各音程を加減調整し、異名同音にした調律法が数多く発明されました。一般的に古典調律と呼ばれる調律法はここに含まれるとの見方が多いようです。
キルンベルガーⅢ
キルンベルガーはバッハの弟子で作曲家でした。「キルンベルガーの第3調律法」とはピタゴラスとミーントーンを組み合わせたもので、ドからミまでの4つの5度の積み重ねにはミーントーン5度(696.5セント)を用い、その他の5度の積み重ねにはピタゴラス音律の純正5度(702セント)を使用する方法です。
また、狭い5度を4ヵ所で使用することで、純正5度を12回積み重ねることで生じるピタゴラスコンマやミーントーンのウルフをうまく目立たなくしており、ピタゴラス音律やミーントーンのような、はっきり演奏できない調の存在を避けています。

ヴェルクマイスターⅢ
ヴェルクマイスターは、ドイツのオルガン奏者でキルンベルガーより少し古い人ですが、この調律法はバロック時代の演奏会でよく使用されるようです。
キルンベルガーの第3調律法のA-Dの狭い5度を2つ隣のB-F♯の5度に移したものがヴェルクマイスターの第3調律法です。

平均律(12平均律)

オクターブ12音で、すべての調に転調する事が可能になり、どの調においても同じ響きを持っている。純正調が決められた調において美しい響きを持っているのに対しオクターブとユニゾン以外のすべての和音、音程において決められた唸りが付いている。その唸りを使い調律を行っているが、それが転調を自由にさせている理由である。平均率、純正調、古典調律法も、オクターブは唸りがゼロの純正ですが、12平均率は各音程を広め、狭めてオクターブに到達させています。
1.12平均率の5度、4度、長3度の成り立ち
◇5度
 純正5度を12回繰り返すと7オクターブに到達しますが、オクターブを7回繰り返したものより24cent広くなるので、1つの5度を2centずつ狭くしてオクターブに到達させています。
◇4度
4度は同じように12回繰り返すと、5オクターブに到達しますがオクターブを5回繰り返したものより24cent狭くなるので1つの4度を2cent広くすることによりオクターブに到達させています。
◇長3度
長3度は3回繰り返すと1オクターブになりますが、オクターブより42cent狭くなるので1つの長3度を14cent広くすることによりオクターブに到達させています。




 理論と作業工程
 第1章 ピアノ概論
 1 音楽の知識
 楽典
 西洋音楽史
 楽曲
 作曲家
 音楽産業
 2 楽器の知識
 楽器の分類
 ピアノの種類
 ピアノ発達史
 世界各国のピアノ
 使用と保守管理

 第2章 ピアノ構造論
 機構と材料
 発音機構
 打弦機構
 ペダル機構
 外装

 第3章 ピアノ調律論
 音の性質
 ピッチ
 平均律と各種音律
 検査方法
 張力計算
 カーブ
 調律音程

 第4章 ピアノ整調論
 手順及び寸度
 関連工程
 症状別対処法
 機能点検

 第5章 ピアノ修理作業
 発音機構
 打弦機構
 ペダル機構







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