ピアノ調律師の基礎知識

 音の性質 / ピアノ調律論

音は聴覚で認識され、人の可聴範囲は低い方で約20ヘルツ、高い方で最大2万ヘルツくらいまであり、こうした人に聞こえる音を可聴音といいます。
音は縦波であり音波と呼びます
人の耳に聞こえないほど低い音を「超低周波音」と呼び、人の耳に聞こえないほど高い音を「超音波」と呼んでいます。
音波は疎密波(粗密波)、音速波、媒体、媒質により異なります。
音波の性質として振動数、波長周期、振幅速度などがあり、波形として表現できます。

音の疎密(粗密)
音が空気を伝わってくるとき、空気は押し縮められて「密」になったり、引き伸ばされて「疎」になったりする。こうのような空気の運動や疎密の変化が音の正体です。

媒質
音を伝える物質を媒質といいます。空気は音の代表的な媒質ですが、空気以外の気体や、水などの液体、金属などの固体も音を伝える媒質です。空気のない真空状態であると音は伝わりません。

音の速度
空気中では音は毎秒340mの速さですすみますが、この速度は媒体により異なります。これは媒質の密度や弾性が違うためです。ちなみに水中では音波は毎秒1500mと、空気中の4倍以上の速さで伝わります。
音速は、媒質となる物質の、密度と弾性率によって決まります。
音速=√弾性率/密度

縦波
空気中の音は媒質である空気が、ばねのように疎密を繰り返すことで伝わり、このような波の進む方向と媒質の運動の方向が同じである波を「縦波」といいます。つまり空気中を伝わる音は縦波になります。

音波の性質
音波は縦波でありますが波であることには変わりなく、反射、屈折、回折、干渉という性質をもちます。
反射
山びこは、音が山などに反射して戻ってきたものです。山ではなく金属の板や壁などでも音は反射します。音楽ホール内で何度も反射した音を残響といい、これをうまく制御していい音を出しています。
そして音波の反射においても入射角=反射角という反射の法則が成り立ちます。
屈折
音が音の伝搬速度の異なった2つの媒質の境目を通過するときに「屈折」という現象が生じます。
回析
曲がり角などの障害物の裏に隠れた相手の話し声が聞こえるという経験は誰でもあるでしょう。これが音の「回折」という現象です。
干渉
干渉とは、2つの音の音圧の重ね合わせが起こることから生じる現象です。ピアノの調律作業で直接関係する「唸り」は音の干渉によるものです。このとき、2つの振動数が近くなると「唸り」という現象として感じることができる。
調律ではさらに共通倍音の唸りを利用しますが、認識として音程比、音律音階、音程計算が関係しますので第3章 ピアノ調律の項で説明します。

透過音・反射音
音は吸収されたり反射されたりする。
透過音が少ないことを遮音効果が高い
反射音が少ないことを吸音効果が高い

楽音
音は楽音と騒音の区分があり、その波形により判断できます。また、楽音には倍音が含まれ、純音の波形はサインカーブなどの性質をもっています。

楽音の四要素
 1)長さ: 音の連続している時間の長さです。
 2)高低: 振動数の多少により決まる。
 3)強弱: 音波の振幅の大小により決まる。
 4)音色: 音波の形状により決まる。

協和音と不協和音
協和音は協和して聞こえる音程・和音のことで、安定感があります。不協和音とは、協和しない音程・和音のことで、調和が乱れている音のことです。

主な協和音と不協和音の音程の一覧
完全協和音 不完全協和音 不協和音
完全1度 長3度 長2度
完全8度 短6度 短7度
完全5度 長6度 長7度
完全4度 短3度 短2度

倍音
倍音とは基本振動数の整数倍の振動数をもつ上音です。

各倍音の音程一覧(A37key 220Hzを基音として)
倍音 振動数 音程 鍵盤
1倍音 220Hz 完全1度 A37
2倍音 440Hz 1oct A49
3倍音 660Hz 1oct完全5度 E56
4倍音 880Hz 2oct A61
5倍音 1100Hz 2oct長3度 C#65
6倍音 1320Hz 2oct完全5度 E68
7倍音 1540Hz 2oct短7度 G71
8倍音 1760Hz 3oct A73
9倍音 1980Hz 3oct長2度 B75
10倍音 2200Hz 3oct長3度 C#77

音程比
純正の場合、2つの音の振動数は、整数比で表せます。

音程比一覧 
音程 音程比
完全1度 1:1 C-C
短2度 15:16 C-D♭
長2度 8:9 C-D
短3度 5:6 C-E♭
長3度 4:5 C-E
完全4度 3:4 C-F
完全5度 2:3 C-G
短6度 5:8 A-F
長6度 3:5 C-A
短7度 4:7 C-B♭
長7度 8:15 C-B
完全8度 1:2 C-C
10度(1oct長3度) 2:5 C-E
12度(1oct5度) 1:3 C-G

共通倍音
共通倍音は調律で有効利用されます。完全5度の場合、音程比は2:3ですから低い音の3倍音と高い音の2倍音が共通倍音になります。
さらにそれぞれの高次の倍音が共通になる場合もありますが、通常は最初に生じる倍音をさします。

割り振りにもちいるF-Aの共通倍音の例
33Fと37Aの長3度の共通倍音を求めてみましょう。
長3度の音程比は4:5ですので低い音33Fの5倍音と高い音の37Aの4倍音が共通する倍音です。
4倍音は2オクターブ上の音なので、したがって37Aの2オクターブ上、61Aになります。33Fの5倍音、すなわち2オクターブと長3度上は61Aとなり、これらの共通倍音は61Aとなります。

振動数
音は媒質の疎密の繰り返し変化(振動)であるから、その振動には繰り返しのパターンがある。音の高低は、この振動の繰り返しの回数によって決まってくる。一般に、音の高さは1秒当たりの繰り返し回数を示す「振動数」(「周波数」とも言う)によって表される。周波数を表す単位にはヘルツ(Hz)という単位が用いられ、低い音は振動数が低く、高い音は振動数が高い。

振動数表(平均律)

セント(cent)
音程をしめす単位で1オクターブが1200cent(セント)と定義されている。イギリスの音響学者A.J.エリス(1814-1890)が音律を理論的に表示し、わかりやすくするために周波数を対数で表した対数値のひとつです。平均律の場合、半音は1/12の100cent、全音はその2倍の200centとなる。
音律や純正な音程など音程差が問題になる場合につかわれる。

セントによる各音程の平均律と純正律の誤差
音程 cent(純正律) cent(平均律) 誤差
完全5度 701.955 700 +1.96
完全4度 498.045 500 -1.96
長3度 386.314 400 +13.686
短3度 315.641 300 +15.641
長6度 884.359 900 -15.641
短6度 813.686 800 +13.686
長2度 203.910 200 +3.910

平均律において次の音程は純正律より
完全5度は約2cent狭い
完全4度は約2cent広い
長3度は約14cent広い
短3度は約16cent狭い
長6度は約16cent広い
短6度は約14cent狭い
となる。

半音係数
半音係数とは平均率の半音の振動数比、半音係数を12回かける、すなわち12乗すると1オクターブになる振動数値です。
2の12乗根(12√2)=1.0594631となる。




 理論と作業工程
 第1章 ピアノ概論
 1 音楽の知識
 楽典
 西洋音楽史
 楽曲
 作曲家
 音楽産業
 2 楽器の知識
 楽器の分類
 ピアノの種類
 ピアノ発達史
 世界各国のピアノ
 使用と保守管理

 第2章 ピアノ構造論
 機構と材料
 発音機構
 打弦機構
 ペダル機構
 外装

 第3章 ピアノ調律論
 音の性質
 ピッチ
 平均律と各種音律
 検査方法
 張力計算
 カーブ
 調律音程

 第4章 ピアノ整調論
 手順及び寸度
 関連工程
 症状別対処法
 機能点検

 第5章 ピアノ修理作業
 発音機構
 打弦機構
 ペダル機構






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